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喪服日誌

唐揚げだけが人生だ。/@yuki_mofk

フロムエア

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分厚い雲を突き抜けて晴天の世界に出た黒い飛行機は、ごうごうと音を立てて南へ飛んだ。雲の上は常に快晴なので、天国が雲の上の世界だとしたら死後の世界というのは退屈だなと思った。飛行機が滑走路で加速して今か今かと離陸を待つ時、もっと速く、もっと高く、何もかも突き抜けてただただ飛んでほしいと思った。目的地がどこでもいい、声も電波も届かない空の果てで、高度と雲の形と宇宙までの距離を漠然と気にするのだ。それができないのは、重力や燃料の残量以前に、現実世界から体に巻きつけてきた仕事とか責任とか約束とか法律とかお金とか時間とかが体を縛って離さないから。その糸は飛行機で飛んだって、電車に乗ったって、走ったって際限なく伸びてくるし、年を重ねる毎にどんどん絡みつくもので、もうどうしようもない。どうしようもないから、飛んでいきたくなる。何もないところへ。限りないところへ。それを叶える手段のひとつが自殺というものらしい。でも繁忙と退屈は背中合わせで立っているから、どちらかに抱かれればもう一方を求めるのが人の性。死んで天国に飛べるとして、天国は退屈そうなので、今度は体を縛っていた糸をかき集める作業を始めるだろう。でも死んだらそれもできないから、天国は優しい顔をした地獄なのかもしれない。いつか死んで魂が胸の内側から毛糸玉の形で転がり出た時、そこに内包されているものが、綺麗でも汚くてもいいから、存在しますように。糸だけの命なんて、誰かの衣類の一部になるだけの人生なんて、ねぇ。