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喪服日誌

唐揚げだけが人生だ。/@yuki_mofk

2016.09.16

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曇りのない青が上空を覆っている時は陽射しの暑さを恨めしく思うのと反対に、冷たい夜の風が吹くときは空は不恰好な灰色を浮かべている。雲のない夜空を最近見ていない。数日先の天候が気になる時ほど空は晴れてくれないもので、手持ち無沙汰の僕は慣れない香水を腕なんかに塗りつけながら空を仰いでいる。駅と連結した商業施設の屋上には庭園があって、都心にも関わらず水音と鈴虫の鳴き声が聞こえる癒しスポットになっていた。こういう場所は異性と二人で来るといい雰囲気になりそうだ、と思ったが、思惑に反してそういった人はいなかったし、僕は一人だった。屋上に吹く風は心地良くて、その気になれば風に吹かれていつまでもそこに居れるようであった。でも程なくして警備員が閉館を告げに来たので、腰掛けていたベンチから立ち上がる。こんな事を言うと中学二年の男子生徒のようだが、風が好きだ。天気を気にする理由は数日後に海に行く用事があるからなのだが、海にしても、目的は塩水に浸かることではない。日本海から吹きつける荒々しい潮風を全身に浴びることが楽しみなのだ。街中にしても、田舎の細道にしても、風が運ぶ温度や匂いに心が動く。花の匂いで心踊らせることも、慣れ親しんだ故郷の温度で心穏やかにすることも、風は知っている。風は自然現象のひとつで匂いの元なんていくらでも原因を究明できるし、その風で何か天啓が降りるかといえばそんな事はない。だが、黙っていれば心の内から湧き出る日常の雑念を一掃してくれるような、そんな作用が風にはある。そんな理由で、ただ風に吹かれるだけの無駄な時間が好きだ。「何もしない」ことが無駄であるかどうかは本人や場合によって変わってくる。僕はそういう無駄でない無駄な時間が好きだ。今は海と金木犀の香りが待ち遠しい。